水のコラム

水の種類にはどんなものがある?軟水と硬水の違いとは?市販の水についても紹介

2021年05月10日  水について【豆知識】

水の種類は大まかに分けて、軟水と硬水に分けられます。軟水と硬水の違いについて知っておくことで、普段から口にしている水だけでなく、料理や食文化の違いについても理解を深めることができますよ。
また、市販のペットボトルの水は軟水や硬水の違いだけでなく、細かな違いについても製品表示を見ることで知ることができます。

水の種類の違いについて知っておくことで、より身近な水について考えるきっかけになりますよ。
今回は水の種類の違いについて紹介します。

軟水と硬水はどう違う?

ミネラルウォーターのペットボトルのラベルをよく見ると、「軟水」「硬水」という表示があることに気が付きます。
では、この2種類の水にはどのような違いや特徴があるのでしょうか。

・日本の軟水と硬水の基準

軟水と硬水の違いは、水の中にカルシウムイオンやミネラルイオンなどのミネラル成分がどれくらいの割合で含まれているかで決まります。
硬度の測定基準には「アメリカ硬度」「ドイツ硬度」「フランス硬度」「イギリス硬度」があり、日本はアメリカ硬度を採用しています。
日本の水は、1リットル当たりのミネラル成分量が100mg以上だと硬水、以下の場合は軟水です。
硬水は、さらに2種類に分かれており、1リットル当たり100mg以上300mg未満が「中硬水」、300mg以上が「硬水」と定義されています。

・世界での軟水と硬水の基準

世界での基準は日本とは少し違っています。たとえば、同じアメリカ硬度を採用しているWHO(世界保健機構)ではミネラルの含有量が60mg以下なのが軟水、60mg以上120mg未満が中硬水、120mg以上180mg未満が硬水、180mg以上を非常な硬水と水の種類を分類しています。
このように、水の軟水・硬水の基準は国や地域、機関によって違いがあります。

・日本の水はほぼ軟水

日本の水も、地域によっては軟水や硬水の違いがあるのですが、基本的には軟水です。
その理由は、日本の地形や地質に関係しています。通常、雨や雪解け水が地面に浸み込んで地下水となる際に、地中にある岩などから溶け出したミネラル成分が水に溶け込みます。

日本は火山灰が堆積した地層であるのに加え、雨が多く降る気候でもあるため、水が地中にとどまる時間が短くなり、ミネラル成分が溶け込みにくいという特徴があります。
もう一つの理由として、日本には急流で短い川が多く点在することが挙げられます。
通常、地層や岩石のミネラル成分は長い時間をかけて水に溶け込みますが、日本の川ではミネラル成分が混ざる前に川から海へ水が流れ込んでしまうのです。

一方、ヨーロッパやアメリカなどの大陸では、水は硬水の地域がほとんどです。
石灰岩が多い地質のためミネラルが豊富であるほか、広い大陸では川が内陸部から海に流れ込むまでに長い時間がかかるため、水にミネラル成分が溶け込みやすい条件が揃っています。
地下水が地下にとどまる時間も長く、その間にミネラル成分をたっぷりと含んだ硬水になります。

・軟水の特徴

<肌にやさしい>
ミネラル成分が少ない軟水は、肌にやさしい水です。
海外旅行で洗顔や身体を洗ったらピリピリしたり、乾燥しやすくなった経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
これはミネラル成分が肌を刺激することで起こる現象です。
軟水に慣れ親しんでいる日本人の肌にとって硬水は、刺激が強いと感じてしまうのです。

<洗剤の泡立ちがいい>
海外でシャンプーやボディーソープを使ったとき、泡立ちが悪いことにびっくりしたという方も多いのではないでしょうか。
これは石けん成分がミネラル成分と結合して石けんカスになってしまうためです。
軟水では、ミネラル成分が少ないため石けんの泡立ちを阻害することはなく、よく泡立ちます。
海外では石けんの効果を発揮させるため、わざわざ軟水に変化させる薬剤を投入してから洗濯をする国もあります。

<赤ちゃんのミルクには軟水を>
ミネラル成分は人間の体にとって必要不可欠な栄養成分ですが、まだ内蔵機能が十分に発達していない赤ちゃんにとっては負担になる可能性もあります。
ミルクをつくる際には軟水を使うことで、そういった不安はなくなります。

・硬水の特徴

<ミネラルの重要性>
ミネラルウォーターに含まれるミネラルは、人の体に必要な5大栄養素の一つです。
マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどを総称してミネラルと呼んでいます。
ミネラルは体内で生成ができないため、外から摂取する以外に手段はありません。

ミネラルは骨や歯の原料になるだけでなく、心臓機能の調節、神経伝達にも使われます。
硬水は、軟水に比べて多くのミネラル成分がイオン化して溶け込んでいるので、水を飲むだけで必要なミネラルを吸収することができるというメリットがあります。

<疲労回復に>
硬水に多く含まれるマグネシウムは、糖質・脂質の代謝に欠かせません。
代謝がよくなれば、疲労物質も体外に排出されるので、疲労回復を早くする効果が期待できます。
そのため、運動後に軟水よりも硬水を飲むことで疲労回復が早まるといわれています。

<胃腸を活発化>
ミネラルは、胃腸を活発化させる効果があります。
そのため軟水に慣れた日本人とっては、刺激が強いものとなり、胃腸が驚いて軟便や下痢になってしまうこともあります。
この作用を利用して、便秘の方があえて硬度の高い水を飲むというダイエット方法も話題になりました。
初めて硬水を飲むという方は、できるだけ硬度の低い水を選んで飲みはじめる方が安心です。

料理や食文化から見る軟水と硬水の違い


・硬水の料理や食文化の特徴

硬水の地域が多いヨーロッパでは、硬水が食材に与える影響を考えて、水を使わずにワインや牛乳で煮込む料理が発展してきました。
また、硬水の作用をうまく使ってエスプレッソのように、あえてコーヒー豆の苦味やコクを楽しむという食文化も確立されました。

日本でも、硬水で日本酒を造ると辛口のお酒になるため、硬水の地域である兵庫県の六甲山地域で造られる日本酒は、辛口の銘柄のものが有名です。

・硬水を使ったおすすめの調理方法

<肉を使った煮込み料理>
ヨーロッパやアメリカでは、家庭料理として肉料理を中心とした煮込み料理が定番です。
そのようなレシピが発達したのには、硬水が大きく貢献しています。
たとえば、牛スジ肉や牛テール肉を使ったシチューなどの煮込み料理では、硬水を使うことによってミネラルが肉のアクを取ってくれます。
また、アクを取ることで肉の雑味や臭みを取るだけでなく、肉の繊維を柔らかくしておいしさを引き立てる効果もあります。

日本でも、硬水地域である沖縄の郷土料理、「ソーキそば」はダシとして「昆布」「鰹節」そして「豚肉」が使われています。
硬水に多く含まれるカルシウムが豚肉の臭みを消すため、美味しい旨味をより引きだすことができるのです。

<パスタ料理>
パスタは、硬水で茹でることによってミネラル成分がパスタの小麦と反応して、コシのあるパスタに茹で上がります。
パスタを茹でる際に食塩を入れるという調理法は、食塩に含まれるミネラルを利用して、パスタにコシを与えるテクニックの一つなのです。

<パエリア>
パエリアの美味しさの決め手は、パラパラのご飯粒が具材の旨味を吸い込んでいることですが、この米粒のパラパラ感を支えるのが硬水です。
タイ米などの長米を使わなくても硬水で炊き込むことで、本場のスペインのパエリアの触感や風味を味わうことができます。

<煮込み料理>
日本料理でも、煮込んで型崩れさせたくないカボチャやジャガイモには硬水を使うといいでしょう。
さらに、レンコンやゴボウなど歯ごたえを残したい食材の場合なども、硬水を使うことでシャキシャキ感をキープすることができます。

・軟水の料理や食文化の特徴
軟水は硬水に比べて昆布のグルタミン酸や、鰹節のイノシン酸などのうまみ成分が溶け出しやすいです。
そのため、特に軟水の地域が多い関西では出汁文化が発達しました。
また、日本の文化を語るのに欠かせない「お茶」に関しても、軟水は癖が無くまろやかなため、日本茶の味や香りを楽しむためには欠かせないものです。

そのほかにも、日本酒を軟水で作ると酵母菌の塾生が促進されやすいため甘口の日本酒になります。
京都の伏見地方では軟水から日本酒が造られており、まろやかで甘みのある銘柄のものが有名です。

・軟水を使ったおすすめの調理法

<お米を炊く>
軟水を使ってお米を炊くことによって、お米が水分を吸いやすくなるため、ふっくらもっちりとしたお米が炊き上がります。

<煮もの>
野菜の煮物を作るときに軟水を使うと、調味料が素材によく染みて柔らかくなります。
また、煮魚にも軟水を使うことで、魚の身がふっくらとして魚本来の味を楽しむことができます。

<紅茶や緑茶>
紅茶や緑茶は軟水で入れた方がおいしくなり、色も鮮やかになります。
逆に、お茶を硬水で入れてしまうとお茶のタンニン成分とミネラルが反応して、茶色っぽく変色してしまいます。
味も苦味が先行してしまいお茶本来の甘味が失われてしまいます。

ペットボトルの水の種類の違いとは?


何気なく飲んでいるペットボトルの水ですが、農林水産省が定めた「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によって4種類に分けられています。
それぞれの違いや特徴を見ていきましょう。

・ナチュラルウォーター

ナチュラルウォーターは、特定の水源から採取された水のことをいいます。ナチュラルウォーターとして販売するためには、沈殿・濾過・加熱殺菌以外の人工的な処理を行っていない水であることが条件となっています。
化学的・物理的な処理をせず、天然に近い状態に保たれていることから、健康や美容に効果が期待できると人気の水です。

・ナチュラルミネラルウォーター

ナチュラルミネラルウォーターは、ナチュラルウォーターと同じように沈殿・濾過・加熱殺菌以外の人工的な処理を行っていない水であることが条件です。
ナチュラルウォーターとの違いとしては、特定の水源から採取され、地下でミネラルが溶け込んだ水であるという点が挙げられます。
天然水とも呼ばれるナチュラルミネラルウォーターは、自然そのものの状態を保った水であり、品質保持に高い技術力と設備が必要となるためコストが高くなる傾向があります。

・ミネラルウォーター

ミネラルウォーターは、ミネラルが含まれた水の総称です。
現在、日本で流通しているミネラルウォーターだけでも約1,000銘柄もあると言われています。

ナチュラルミネラルウォーターと同様に地下水を使用していますが、ナチュラルミネラルウォーターが自然そのものの状態をキープしているのに対して、ミネラルウォーターは「濾過」「沈殿」「加熱処理」「オゾン殺菌」「紫外線殺菌」「ミネラル分調整」「ブレンド」「曝気」など化学的、物理的な処理が行われています。
ミネラル成分を人工的に加え、浄水処理もできるため、製造・品質保持が簡単で低コストでの販売が可能な水です。

・ボトルドウォーター / 飲料水

上記3種類のミネラルウォーター以外の飲料用として販売されている水は、ボトルドウォーターとも呼ばれており、水道法に則って飲料可能と認められたものです。

特に水の処理方法などが限定されておらず、逆浸透膜(RO膜)に水道水を濾過したものや海洋深層水などがボトルドウォーターの代表です。
主にウォーターサーバーに多く使われています。
地下水に限定されていないことで、採水設備などコストがかからないため、価格も低い傾向にあります。

水には大きく分けて軟水と硬水の2種類があり、国や地域によってどちらの水が主流であるかが変わります。
日本ではほとんどの地方で軟水であるため、飲料水として硬水を飲む場合などには、飲料後の体調の変化などに気を配る必要があります。

また、料理なども硬水と軟水を使い分けることで、より料理の特性を引きだすことができるので、料理の美味しさを1ランクアップさせたい場合には、お水を硬水と軟水で使い分けるのも一つの方法です。
市販のペットボトルの水は大きく4種類に分かれており、それぞれ成分が違いますので、気になるという方は購入の際に一度確認してみてはいかがでしょうか?

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