水のコラム
日本の水は海外の水に比べて質がいい!?世界と日本の水の違い
世界の中でも日本の水道水は非常に水質が良いことをご存じでしょうか。水道水を飲むことができる国は日本以外にもありますが、日本は徹底した厳しい管理によって他国よりも安全性が高い水道水であるとされています。
今回は日本の水道水と世界の水道水の違いについてご紹介します。日本が世界に誇る水道水について、ぜひ知ってくださいね。
日本と世界の水質基準の違い
そもそも日本と世界では水質基準に違いがあります。日本の水質が良いとされるのにはさまざまな理由がありますが、まずは日本と世界の水質基準がどのように違うのかをご紹介いたします。
・世界と日本の水質基準について
日本と世界では水道水の水質に設けている基準に以下のような違いがあります。
世界でも水質の高い安全性が維持されていますが、数値を見ていると日本は特に厳しいことがわかります。
普段何気なく生活している中で、安全性の高い水が利用できるというのは非常に素晴らしいことだと言えます。
さらに日本では国が定める基準以外に、各都道府県によって独自の水質基準が設けられています。
基準は都道府県によって異なり、場所によっては国が定めているよりも厳しい基準が設けられているケースもあります。
・日本の水道水は安全性が高いとされている理由
そもそも日本と世界では良質な水に求めるものが違うことも理由とされています。
日本では水道法という法律によって、水道水の基準が非常に厳しく定められています。
これはすべて安全性の高い水を国民が安心して使えるようにするためです。
日本では浄化施設などさまざまな場所で、水に処理や検査を加えて管理しています。
日本で水道水に行われる検査はなんと200種類ともいわれているほど多くあります。
海外ではこれほど多くの検査が設けられているのは稀とされています。
また、スーパーやコンビニなどで販売されているペットボトル入りの水についても、厚生労働省が基準を設けているため、品質に不安があるものは日本国内で販売することができません。
・日本特有の水質基準項目もある
日本と海外の水質基準を比較してみると、日本にしかない項目もあります。
たとえば、カビの臭いは日本にしか設けられていない基準です。
水道水に臭いがあると、飲用として使いにくいですよね。生活用水として使う場合も、臭いが強いと気分が悪くなるという方も多いのではないでしょうか。
日本人は他国に比べて臭いについてデリケートな面があるからなのかもしれません。
反対に、海外では設けられているものの日本にはない基準もあります。
国によって環境に差があることも当てはまりますが、日本の場合は海外で設けられている項目と同じ検査が別の項目として施されていることもあります。
・2020年には日本の水質基準が見直されている
厚生労働省は水質の基準や目標数値を「水質基準項目と基準値」によって定めています。
この項目の中の一部が2020年の4月から改正されています。
項目が強化されたのは「六価クロム化合物」です。
六価クロム化合物は多く摂取すると嘔吐、下痢、肝炎、腎機能障害といった毒性を含む物質です。
ほかには「有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)」も新たに基準が設けられました。
有機フッ素化合物は耐熱性、耐薬性などにすぐれた化学物質であり、これまで殺虫剤、コーティング剤、界面活性剤など多くの製品に使われてきました。
PFOSの人体への毒性は研究が続いている段階ですが、残留性が高いことから今後は評価基準の見直しとともに、人体に作用するメカニズムの正確な情報を得るためのモニタリングが必要とされています。
また、自然界の中では分解されにくい安定性を持ち、長期毒性があるため、「残留性有機汚染物に関するストックホルム条約(POPs条約)」にて国際的に製造、使用、輸出入を禁止する物質として掲載されています。
PFOAについても、WHOの関連組織が発がん性のある物質として分類したことにより、国内の主要な化学メーカーが使用を自主規制するなどの動きも出ています。
しかし最近になって水源や浄水など水道水で検出されており、新たな基準が設けられることになりました。
なお、日本の水道水で検出されていた有機フッ素化合物の含有量は、すぐに健康被害が出るほどの量ではないとのことです。
日本ではこれまでも厳しい基準を設けていましたが、環境の変化に合わせてより安全な水道水が使えるよう、日々努力されています。
世界の水道事情
次に世界の水道事情をご紹介いたします。
・日本は水道料金が安い?
当然のことながら水道料金は日本と世界で異なります。
公益財団法人 水道技術研究センターでは国ごとの水道料金をグラフ化しており、それを見ると日本の水道料金は非常に安いことがわかります。
さらに2015年に経済協力開発機構(OECD)が発表した資料には、OECD加盟国の水道料金に関するデータが記載されており、日本は世界で17番目に安いとされています。
1位のデンマーク(コペンハーゲン)が7.63USドルなのに対し、日本は2.18USドルと5.45USドルもの差があり、およそ3倍にあたります。
高い技術力がもたらす安全性と、安い料金で利用できる日本の水道は世界に誇れる事業といっても過言ではありません。
・国によって水質で重視する項目が異なる
今回ご紹介してきたように、日本の水道水は高い安全性が確保されています。
ですが海外では安全であるだけが良い水とは考えられていないという見方もあるようです。
ヨーロッパの方ではミネラルを豊富に含む水が好まれており、水道水にもミネラル成分が多いことが伺えます。
海外から輸入されているミネラルウォーターを口にしたことがある方は、日本の水の味と大きく異なることをご存じかと思いますが、あれは成分の違いが理由です。
成分の違いなどについては次の項目で詳しくご紹介します。
・日本の水道水は軟水がメジャーだが世界では…?
普段からミネラルウォーターを飲む方はよくご存じかもしれませんが、水には軟水と硬水があります。
日本の水道は軟水がメジャーですが、世界の水道と比べてみると、軟水が水道水になっているところは実はそれほど多くありません。
※日本でも地域によっては水道水に硬水が使われています。
硬水と軟水の違いは、水1リットルあたりに含まれているマグネシウムやカルシウム量によって分けられます。
WHOでは1リットル中、120mg未満が軟水、以上が硬水という基準を設けています。
さらに細かく分類すると0~60mg未満が軟水、60~120mg未満が中硬水、120~180mg未満が硬水、180mg以上が超硬水となります。
硬水の特徴は豊富なミネラル成分ですが、ミネラルが多いことで舌触りにざらつく感触があったり、独特の味が残るなど軟水に比べて飲みにくさを感じます。
そのため、はじめて硬水を飲んだときに苦手意識をもつ日本人は少なくないようです。
また、硬水はミネラル成分の影響により石鹸が泡立ちにくいといった特徴もあります。
海外旅行などで日本から石鹸を持ち込むと泡が立たないことや、劣化してしまうといった現象が起きることがあります。
あれは水の性質によるもので、硬水に適した石鹸を選ぶことで回避できます。
日本にも水道水に硬水が使われているところはあるものの、ほとんどの地域では軟水が使われています。その理由には国の広さが関係しています。
硬水に含まれているマグネシウムなどは地下の岩石から成分が溶け出したものです。
日本は島国で土地面積が小さいため、水に多くのミネラルが含まれる前に海に流れてしまうことが多く、軟水の割合が多い国となっています。
日本以外ではイギリスも同じような理由で水の硬度が低いようです。
水の性質の違いは日常生活とも密接に関係しており、たとえば料理に使うならクセのない軟水の方が適しているといったような特徴があります。
和食に欠かせない出汁づくりも硬水では難しいため、海外で出汁を使った料理をする際は水の硬度に注意が必要とされています。
・世界で水道水をそのまま飲める国は非常に少ない?
「海外に行くときは水道水をそのまま飲まない方がいい」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
海外旅行や海外出張が多い方はすでにご存じかもしれませんが、海外で水道水をそのまま飲まない方が良いとされている理由はいくつかあります。
単純に硬水と軟水の違いで飲みにくいといったこともありますが、インフラ整備が国によって違うことが主な理由です。
今回ご紹介したように、国によって水道水の安全基準は異なります。水の安全性を保つためには多くの検査や処理が必要となり、莫大なコストがかかります。
発展途上国では水道が通っていない地域もあり、たとえ水道が通っていても十分に処理されていないこともあります。
海外での医療費は保険がきかないため高額になりやすく、自分の身を自分で守るためにも、水道水はできるだけ飲まない方が良いとされているのでしょう。
なお、国土交通省の土地・水資源局水資源部平成16年版「日本の水資源」によると水道水をそのまま飲める国は日本を含め15か国とされています。
日本以外に該当するのは、スウェーデン・フィンランド・ドイツ・アイスランド・アイルランド・オーストリア・スロベニア・アラブ首長国連邦・ナミビア・モザンビーク・レソト・南アフリカ共和国・オーストラリア・ニュージーランドの14か国です。
ただし、中には水道水をそのまま飲めるほど安全性が高い国であっても、調査対象から外れていることもあります。
また、国によって水道水は生活用水にのみ使い、飲用水は購入するといったケースもあるため、一概に他国の水道水に問題があるとも言えません。
日本が水道水に恵まれている理由
なぜ日本が水道水に恵まれているのかは、2つの大きな理由があります。
・国民1人当たりの降水量は少ないが国としての降水量は多い
日本は1年を通して雨や雪が降るため、十分な降水量があることが一つ目の理由に挙げられます。
国土交通省が発表している日本の水資源平成13年版によると、日本の年間降水量は1,714mmで、世界の平均は973mm、1人当たりに換算すると日本の平均が5,103mm、世界では21,796mmとなっています。
国民の数と降水量を比較すると降水量が少ないという結果になりますが、国として考えると十分な降水量です。
また、最近は節水の技術や設備が整っていることもあり、水の消費量を抑えられつつあることも背景にあります。
・インフラが整っている
日本には山が多いためダムなどの建設も行いやすく、日本全国にあるダムではたくさんの水を保有しています。
さらに日本は離島などを除き、97%以上で水道が通っているといわれています。
この基準は世界と比較してもトップの高さを誇っており、日本に住んでいる限りほぼどこにいても安全性の高い水を手に入れることができます。
ただし日本にも水の問題はある
日本は水に恵まれた環境だと感じた方も多いかもしれません。
しかし、日本には水に関する問題がまったくないかと言われればそうではありません。
最後に、日本の水に関する問題についてご紹介いたします。
・日本は水の輸入大国
安全性の高い水が豊富にある日本ですが、実は世界でも非常に多くの水を輸入している国ともいわれています。
日本の灌漑(かんがい)農業で年間に使われる水の量が590億立方メートルなのに対し、年間で640億立方メートルの水が輸入されています。
これは日本の食料自給率の低さが原因と言われています。
・バーチャルウォーターとは
日本への水の輸入は、水そのものではなく「バーチャルウォーター」と呼ばれるものです。
バーチャルウォーターとは、輸入した食料の生産に必要な水の量を指します。
たとえば、小麦粉を輸入する際、小麦が育つまでに必要な水は生産国に依存することになります。
その水の量が日本に多く輸入されているバーチャルウォーターにあたります。
よって日本には十分な水があるとされている背景には、食料の輸入を通じて水を輸入しているためとも考えられています。
2000年を過ぎた頃から、数十億人が飲み水とトイレを使えるようになったものの、安全性が確立されておらず、それが原因で幼い子どもや多くの人が病気に罹ったり命を落としたりしています。
農業生産においても、家畜や農作物の育成に十分な水が確保できない地域もあります。
バーチャルウォーターの輸入量が増えるということは、このように水を手に入れられない地域の人々にも影響を与えると考えられており、日本の輸入量の多さが問題視されています。
水は私たちの生活に必要です。
水の問題は世界ともつながっているため、貴重に使うことがとても大切だということがお分かりいただけたかと思います。
日本には安全な水道水が普及しているだけでなく、水道の修理技術も高品質です。
水とともに安全な日常生活をおくるためにも、水道のトラブルが起きたときはすぐに専門家に連絡をしましょう。